第11章

6/15

89人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
「ママ、あのおじちゃんだれ? どこかでみたようなきがする…」 さっきの女の子が杖をついた女性と歩いてきた 「ママの大切なひと…」 「たいせつなひと?」 「ナナが生まれる前のはなし…」 「ママ、あのおじちゃんがすきなの? ナナのパパになるの?」 「違うよ…もう会う事もないよ…」 「ママ、かなしいの? ナナがおじちゃんにたのもうか? パパになってくださいって… あっ、あのしゃしんのひとだ! ねぇ、ママのていきいれのしゃしんのひとだよね?」 「よくわかったね…そうだよ、ママの宝物の写真の人」 ふたりは反対側の病棟に廊下を曲がって行った やっぱりあの人は雄平さんの事が好きだったんだ きっといまでも… 私は雄平さんのところに行き辛くなった 雄平さんは彼女の事を私に話すのだろうか? それとも私から聞いた方がいいのかな? 「優愛、そこで何してるんだ?」 「ダディ…ちょっと考え事…」 「雄平くんは検査か?」 「ううん…部屋にいると思うよ」 「雄平くんとケンカでもしたか?」 「まだ会ってない…」 「は?いままでずっとここにいたのか?」 わたしは頷いて 「部屋で誰かと話してたから…」 「女か?雄平くんに限ってそんな事はないだろ?」 「そんなんじゃないと思うけど… ダディ…入院患者のスズハラミサキさんてわかる?」 「スズハラ…?あぁ…視力が落ちてきてるって検査入院の? 彼女とはだいぶ前にも会ってるな…」 「ご主人の?」 「お前も知ってるのか?」 「ちょっとだけ…」 「気の毒だったな…自殺だったからな」 「えっ?自殺?」 「こんなとこで話す事じゃないな…」 ダディはまわりを見回し言った ここには私達だけ… だけど誰が聞いてるかわからない 「で、彼女がどうした?」 「雄平さんのお客様…」 「彼女と知り合いだったのか… なんだ?それであれこれひとりで考えてたのか? 馬鹿だなぁ…ほら、一緒に行くぞ」 ダディは私の腕を取り立ち上がらせた ダディと一緒なら…
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加