第11章

9/15

89人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
「彼女の事も忘れてしまっていた頃… 電話がかかってきたんだ だけど何も言わず切れて… 見た事ない番号だったから 間違い電話だったのかなって思ったんだ だけど何度かかかってきて たまにあるんだ… 弁護士を必要としてるけど 費用はいくら掛かるんだろうとか 不安がいっぱいで電話を掛けるのも ためらっている人がね… きっと困ってる人なんだろうって思って こっちからその番号にかけてみたんだ だけど出なかった 『何度かお電話いただいていた 弁護士の長坂雄平といいますが お困りの事があるのではないですか? 正式にご依頼いただくまでは 料金はかかりませんので 安心してご相談にいらしてください』 俺はメッセージを残して相手からの電話を 待つ事にしたんだ そして…次の日、かかってきた だけど電話がつながっても何も話さず 時々、泣いているのか鼻をすする音だけが聞こえて 『大丈夫ですよ… ゆっくりでいいから話してみてくれませんか?』 俺がそう言ったら 『せん…せ…美咲…です…』 『美咲…?鈴原美咲ちゃん?』 『雄平先生…助けて…』 『どうしたの?いまどこにいるの?』 『ビルの前…です…』 『ビルの前?ここの?待ってて、すぐ行くから』 俺が下に降りて行ったら エレベーターホールの横で しゃがみ込んで泣いている彼女がいたんだ 事務所に連れて行って彼女が落ち着くのを待ってたら 『彼を…彼を助けてください…』 そう言ったんだ 『彼?美咲ちゃんの彼?』 『私の…夫です…』 美咲ちゃんは結婚してたんだ 『ゆっくりでいいから、詳しく話してくれる?』 それから彼女は、俺と会ってなかった頃の話を してくれたんだ あの玉突き事故から半年過ぎた頃 スーパーの帰りにひったくりに遭って 通りかかった人に助けてもらったそうなんだ その人はスーパーによく買いに来ていた人で それがきっかけで付き合いだしたって… ちょうど俺がスーパーに行って辞めたのを知った頃で 彼の転勤がきっかけで結婚したみたいなんだ」
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加