第11章

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トントン 病室をノックする音がした 「どうぞ…」 俯いたままの雄平さんのかわりに私が言った だけどドアを開けて入ってくる様子がない 私がゆっくりドアを開けると 「こんにちは…ゆうへいせんせいいますか?」 さっきの女の子がいた 「えっと…ナナちゃん?」 女の子は「…?」という顔をしている 「あっ…さっき廊下でママを探してたでしょ…」 「あぁ…みられちゃった?でもナナなかなかったよ」 「そうだね…雄平先生に会いにきたの? 中に入って…どうぞ」 雄平さんは誰?って顔をして見ている 「ゆうへいせんせいですか? すずはらななです…ママがおせわになってます」 ナナちゃんは雄平さんの近くまで歩いて行くと そう言って頭を下げた 「美咲ちゃんの娘さん? 凄いね…そんな挨拶ができるなんて…」 「ほんとね…しっかりしてるね… ナナちゃんはいくつ?」 「4さいです」 「柚乃よりひとつ上か… ずっとお姉ちゃんみたいだ…」 「せんせい…おねがいがあります…」 「何だろう?何でも言ってみて…」 優しい顔で雄平さんがそう言うと 「ナナのパパになってください!」 そう言って思いっきりお辞儀をした 「へっ?…パパ?」 「ナナちゃん、顔を上げて」 私が言うとナナちゃんはゆっくり頭を上げた さっきとは違い泣きそうな顔で 「ママはずーっとせんせいのことがだいすきだったの…」 そう言って雄平さんに何かを差し出した 「これは?あっ…これはママが持ってたの?」 雄平さんは定期入れに入った写真を見てそう言った 「ママのたからものだから…」 ベッドのそばの椅子にナナちゃんを座らせて 私はベッドの向こう側の椅子に座った
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