第12章

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「先生、大丈夫です… もう雄平先生には会いませんから… ごめんなさい…不安になっていた時 検査室で雄平先生を見かけて つい…声を掛けてしまって… こんな私を見たら 放っておけない人だってわかってるのに 誰にも話せなくて… 不安で不安で怖かったから… 知ってる顔を見たら…」 「美咲さん、私も医者ですから 患者さんの不安な気持ちはわかってるつもりです 美咲さんにはまだ小さいお子さんもいる 自分の事だけでなく子供のこれからの事も 考えて不安になってるのは当たり前です 私はあなたを責めたいんじゃないの 私の話を聞いてくださいね」 美咲さんはまだ不安そうだけど ゆっくり頷いた 「私は嘘や隠し事は嫌いなので 本当に私が思っている事を話しますね それを聞いて考えて欲しいの もう一度言いますけど 私の本当の気持ちなので あなたも気を遣ったり嘘はなしですよ」 「はい…わかりました」 美咲さんは私の目を見てそう言った 「私と雄平さんは出会って間もないんです 雄平さんには血の繋がらないお子さんがいます 柚乃ちゃんっていいます その子がこの病院に来て私が診てから しかも私の伯父の知り合いで 同じマンションに住んでたのがわかって 親しくなりました 柚乃ちゃんを一生懸命に育てている 雄平さんを見ていて私も自然に 柚乃ちゃんを自分の子供のように 接するようになって 私の事をママって呼んでくれて 本当に可愛くて… 雄平さんともだけど それ以上に柚乃ちゃんと家族になりたいって 言っちゃったくらい… いま私は妊娠してます まだ籍は入れてませんけど 雄平さんが退院したらって話してます もうすぐ雄平さんは退院できると思います だけど美咲さんの病気を知って 雄平さんはいろんな事考えています 自分が起こした事故の後遺症じゃないかとか ナナちゃんをひとりで育てて 苦労してた事も何も知らなかった 身寄りがないのに自分を頼ってきてもらえなかったのも 自分のせいだって自分を責めています 私は美咲さんの気持ちも雄平さんの気持ちも 痛いくらいわかります 私ね雄平さんに言ったんです 美咲さんとちゃんと話をしてって きっと不安だろうだから 支えて欲しいって思ったから 私には両親もきょうだいもいます だけど美咲さんはご両親も亡くされて 頼れる人はいないって雄平さんに聞きました」
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