第1章

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マーモを院長室に残して一階の受付に行くと 「優愛先生を呼んでください… お願いします…」 私の担当の川岸のおばあちゃんがいた 「おばあちゃん、どうかしたの?」 「優愛ちゃん…どうしたらいいの… 私が家政婦で行ってる家のお嬢ちゃんが…」 おばあちゃんの視線の先に 待合室のソファに横たわる小さな女の子が… 「あの子?どうしたの?」 「お腹が痛いって泣いてるんだよ…」 女の子の側に行くと真っ青な顔で お腹を押さえたまま動かない 「大丈夫?」 私が話し掛けるとゆっくりと目を開け 涙を浮かべながら 「パパぁ…パパぁ…」 「ゆのちゃん…パパはいないよ… ばあばがいるからね…」 「パパぁ…パパぁ…」 「おばあちゃん、この子の保護者は?」 「パパは今日は仕事で東京に行ってるのよ… 東京に着いてる頃かしら…」 「ママは?」 「いないの…」 「…パパに連絡を取って この病院にいる事を伝えて… この子の名前と住所、保護者の名前を これに書いてください 応急処置をして保護者の方の連絡を待ちます」 「お願いします… この子のパパはすぐそこに事務所がある 弁護士さんで… 長坂雄平(ながさかゆうへい)先生 この子は柚乃(ゆの)ちゃんで3才」 「弁護士さん?今日は何かの集まり?」 「たしかそんな事を言ってたね…」 「とりあえず院長に診てもらうわ… もしもし…鈴木です 院長、急患です… 緊急処置室に運びますのでお願いします」 「優愛ちゃん…大丈夫だよね…」 「おばあちゃん、大丈夫 だから、パパに連絡を…」 「わかったわ…柚乃ちゃんをよろしくね 電話してくるわ」 私は柚乃ちゃんを抱いて処置室に急いだ 「優愛!」 「院長…長坂柚乃ちゃん、3才 意識はあります… 保護者はいま東京だそうです 川岸のおばあちゃんの知り合いです」 「おばあちゃんのお孫さんではないのか?」 「近くに事務所がある弁護士さんのお子さんで おばあちゃんが家政婦の仕事で行ってるそうです」 「弁護士の長坂? あぁ…コンビニの2階にある弁護士事務所だな… 連絡は取れたのか…?」 「まだ…」 「優愛先生、川岸さんが呼んでます…」 「はい!いま行きます…」
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