第1章

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処置室を出ると 「優愛ちゃん…何回かけても繋がらないの…」 「そう…じゃ、私の知り合いにちょっと聞いてみるね あっ、ミズ?優愛だけどいま話せる?」 『おぉ、優愛か…どうした?』 「いま、東京じゃないよね?」 『東京だけど?集まりがあって親父と来てるよ』 「本当?ねぇ、うちの病院の近くに事務所がある 弁護士の長坂雄平さんて知らない?」 『俺はまだわかんないな… 親父ならわかると思うけど、どうかしたのか?』 「3才の娘さんがお腹が痛いって 家政婦さんがうちに連れてきたんだけど 治療には保護者の方の承諾が必要だから… でも、連絡が取れなくて…」 『事情はわかった…親父に話して探してもらう 任せろ!大丈夫だ…』 「ごめんね、助かる…じゃ、宜しく!」 「優愛ちゃんの彼氏?」 「違う違う…いとこよ… いま、探してもらってるから大丈夫… 待合室で待っててもらえる?」 「ありがとう…柚乃ちゃんを宜しくね… あの子は普段からおとなしい子で わがままひとつ言わないんだよ…」 「大丈夫…任せて…」 処置室に戻ると 「便秘だな…」 「便秘?」 「小さな子にも多いんだよ… 優愛は時間あるか?」 「えぇ…外来もないし…」 「じゃ、綿棒でちょっとやってくれないか? ゆっくり時間かけて出してあげて… ワセリン使って… 家でもベビーオイルとかで やってあげるといいんだが…」 「ママがいないみたいで…」 「そうか…じゃ、こんなにならないうちに 来るように言って…」 「そうね…」 私のスマホが震えた 「ミズ、ごめん…」 『あっ…長坂です…』 「ごめんなさい…杜崎さんかと思いました」 『娘が運ばれたそうですが…』 「ごめんなさい、心配しましたよね… いま診察したら便秘のようなんです 前にもありましたか…?」 『いえ…多分ないと思いますが…』 「だいぶ我慢してたみたいで… これから処置して良いでしょうか? 時間を掛けてゆっくり出してあげたいんですが」 『お願いします…すぐには戻れませんが なるべく早く帰るようにします… 何かありましたら私の携帯に連絡いただければ 助かります』 「わかりました…お仕事中すみませんでした」 『こちらこそ…宜しくお願いします 杜崎さんに変わります』 『ごめん、優愛…電話した途端呼ばれて 長坂さんに渡しちゃって…』
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