クリスマス・シフト

12/13
232人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
段々彼の言わんとしている事が見えてきて、けれどもそれが信じられなくて、動悸が早くなる。 「ねえ、莉花、 仕事じゃないところでも、俺と一緒にこうして居てくれる?」 「……彼女、居るのでは?」 可愛い返事ではなく、一番にその疑問を口にしたことに我ながら呆れた。 いやいや、でも大事なことだし。 「は…?いないけど? あ、あー…売り場ではね、そう言うことにしてる。 だって女の子が多い職場だからさ、そういう断り方でないと、上手くいかないからさ。 でしょ?」 でしょ…って… 確かに説得力あるが、長年の私の悩みって… 複雑な気持ちになり、何も言えなくなると、松浦さんがふと思いついた様に、私の顔を覗き込んだ。 「まさか、莉花は彼氏いるの…?」 「まさかってどう言う意味ですか! ………いません…誰かさんのせいで…」 前半の勢いに比べてモゴモゴとつぶやいた言葉は、しっかりと聞こえたらしく、松浦さんは一瞬目を見開いたあと、満面の笑みになり、 「ほら、莉花、乾杯しよう」 もう一度、紙コップのシャンパンを持ち上げた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!