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段々彼の言わんとしている事が見えてきて、けれどもそれが信じられなくて、動悸が早くなる。
「ねえ、莉花、
仕事じゃないところでも、俺と一緒にこうして居てくれる?」
「……彼女、居るのでは?」
可愛い返事ではなく、一番にその疑問を口にしたことに我ながら呆れた。
いやいや、でも大事なことだし。
「は…?いないけど?
あ、あー…売り場ではね、そう言うことにしてる。
だって女の子が多い職場だからさ、そういう断り方でないと、上手くいかないからさ。
でしょ?」
でしょ…って…
確かに説得力あるが、長年の私の悩みって…
複雑な気持ちになり、何も言えなくなると、松浦さんがふと思いついた様に、私の顔を覗き込んだ。
「まさか、莉花は彼氏いるの…?」
「まさかってどう言う意味ですか!
………いません…誰かさんのせいで…」
前半の勢いに比べてモゴモゴとつぶやいた言葉は、しっかりと聞こえたらしく、松浦さんは一瞬目を見開いたあと、満面の笑みになり、
「ほら、莉花、乾杯しよう」
もう一度、紙コップのシャンパンを持ち上げた。
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