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若干ぎこちなく、私も同じように紙コップを持ち上げる。
「まあBGMは、いい加減聞き飽きちゃうし、お腹いっぱいでありがたみのないクリスマスソングだけど」
皮肉げに言ったのは、さっき私が言ったセリフそのままだ。
それで、『まずいな』だったのか。
密かに苦笑する。
でも不思議。
ベタなのに、今まで聞いたことがない音楽みたいに綺麗だと思える。
「メリークリスマス」
カチンとは言わない、残念な感触だけどお互い笑いながら紙コップを合わせた。
その瞬間、音楽が終わり、音楽隊が時計の内側へ帰っていく。
そして、
「あ」
音楽隊がパタンと完全にしまわれたと同時にイルミネーションが一斉にパッと消えた。
一瞬…戸惑ったけれど、
すぐに、大きくて温かい手に肩を包まれ、そのまま引き寄せられるのを感じて、
私はゆっくり、目を閉じた。
*****END*****
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