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「えー本当にい…?」
「本当本当、だからさぁ…」
イチャつきながら、のろのろとサイフを出すカップル。
おーい、早くしろ…
心の中で、本日何十回目かの呪詛にも近い、その言葉をつぶやく。
右手を見やると、長蛇の列が続く。
きっと今がピークだ。
「よろしければ、そちらのお荷物をこちらと一つにおまとめしましょうか?」
そう声を掛けると、「あら」と、女性の方が『今初めて目の前の物体が人間があることを認識した』かのように、こちらの顔を見た。
「そうね…
じゃあお願いしようかしら」
「はい、ではお預かりしますね」
女性から受け取った小さなビニール袋から、ふわんと食欲をそそる匂いがした。
きっと向かいのデリのフライドチキンに違いない。
うう、お腹空く…。
ちらりと画面に目を走らせると、デジタル時計の表示は「17:24」。
休憩は一時間前に終わったばかりだから、今日はあと二時間半はこのまま立ち続けることになる。
仕方が無い。
今日はクリスマスイブ。
そして、遅番。
「178円のお返しになります。
ありがとうございます。
またどうぞお越し下さいませ」
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