クリスマス・シフト

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だからせめて限られた時間、残り少ない貴重な、一緒に居れるときだけでも、好きでいるだけなら、いいよね。 誰に許しを請うわけでもないが、頭の中でうんうん、と頷きながら作業を黙々としていると、ふっ、と視界に影が落ちた。 「どう?合ってる?」 「わっ」 いつの間にか、松浦さんが目の前に立って、私の作業を見下ろしている。 急に声を掛けられ、文字通り飛び上がった私は、親指と人差し指で繰って数えていたお札の束の、カウントを途中で忘れてしまった。 「あ、ごめん」 「……すみません、もう一度やります…」 「うん」 遅番で入ると、閉店後こうして話す時間があって、それがすごく好きだ。 レジパートさんは主婦の人が多くて、学生はそんなに多くないから、私は遅番に入ることが多い。 今日はイブだから、最後まで一緒に居たかったので、遅番で密かに嬉しい。 締め作業、小銭カウンターは既に端数がレジの記録と一致しているから、残るはお札の枚数の確認だけだ。 けれど、目の前でじっと見られていると思うと、緊張で手が震えて、うまく数えられない。 うわー、新人じゃあるまいし、何もたついてるんだろ、私。 「……松浦さん」 「なに」 「気が散るんで、どっか行っててもらえた方が、早く終わりそうなんですが…」 自分で言ったくせに、つくづく私って可愛くないと思った。 同じ意味でも『松浦さんに見られていることを意識すると、ドキドキしてうまく作業ができません』って言えたら良いのに。
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