クリスマス・シフト

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松浦さんは彼女とイブを過ごすのかな… そんなことを考えながらロッカールームでのろのろと着替えをしていたら、いつも以上に時間がかかってしまった。 周りを見回すと、なんと私が最後。 慌てて荷物をまとめ、通用口に向かう。 「お疲れ様です」 従業員バッジを返しながら馴染みの年配の守衛さんに挨拶すると、彼はニッと笑って 「メリークリスマス」 と、言った。 まあ私は、アパートに帰って寝るだけなんだけどけどなあ、と苦笑しつつ私も「メリークリスマス」と返し、 通用口の鉄扉を開けた。 「さむ…」 急に肌に触れた外気に思わず上げた声。 「遅い」 真横から更にそれに重なる声があり、飛び上がった。 「え!?」 慌てて声がした左側を見ると、ドアから少し離れた壁に寄りかかって立っている黒い人影がひとつ。 「遅い」 「すみません… って、え?松浦さん?」 もう一度同じ言葉を繰り返した人物に、思わず謝ってから、よくよく見て気が付いた。 ブラウンカラーのファー付きフードの黒いモッズコート、細身のブラックジーンズ。 ミディアムブラウンのエンジニアブーツ、それとお揃い色のレザーの手袋をはめた手を擦り合わせながらこちらを恨みがましそうに見ているのは……さっき別れたはずの松浦さんだった。 ただしいつもとは全然印象が違う。 何て言うか…ちょっとカッコいい…。 「そーだよ、それ以外に誰がいる?」 ちょっと不服そうに顔をしかめている。 「いや…すみません。 なんか普段と雰囲気違うから…」 言いながら『あ、そーか』と気付いた。 松浦さんの私服姿、見るの初めてなんだ。 「いつもだっさい水色の上着来てるからね。 あー、そんなことどうでもいい。 早く行くよ」 松浦さんは壁から体を起こし、足元の黒いバッグを持ち上げると指で真上を指差した。 上?? 意味が分からず首を傾げていると、 「あー、もう、本当に時間ないから。 行くよ」 何か焦っているらしい松浦さんがこちらに歩いてきた。 そして 「!!!」 驚きの余り声が出せなかったが、松浦さんは私の前に立つと空いている方の手で私の手を取ると、そのまま繋いだ。 促されるままに手を繋いで歩き始める。 柔らかいレザー越しに、じわりと伝わる体温。
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