クリスマス・シフト

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え?え? なにこれ? 何が起こってるの? 頭の中で大パニックになりながら、それでもなんとかついていく。 「足元気を付けて」 珍しく黙ったまま歩いていた松浦さんがようやく振り向いたのは、デパート1階エントランス脇にある階段の前だ。 これを上がると、駅の改札階に繋がるペデストリアンデッキに出る。 そして 「うわあ…」 思わず歓声が漏れたのは、ペデストリアンデッキに面したデパートのメインエントランス前に着いた時だった。 駅改札階からのアクセスの良さ故いつも沢山のお客さんが行き来するこの場所は、もちろん今は閉店後なのでシャッターが降りて照明が消えている。 けれどもそのエントランスの上部を見上げると、大きな時計が豪華なイルミネーションで彩られていた。 普段は何も飾りが付いていないけど、1時間に1回、時報の音楽と共に、カラクリの人形が出て来て動き出す仕掛け時計で、地元の人は良く知るこのデパートのシンボルになっている。 自分が小さい頃はよくその様子を飽きもせず眺めていたけど、特にこのバイトを始めてからは直接従業員通用口に向かう為、ほとんど時計を見てすらいない。 ましてや、クリスマスイルミネーションがされているなんて知らなかった。 「間にあったな… はい、座って」 わけも分からないまま、その時計を正面に眺められる植込み前のベンチに促されて腰掛ける。 松浦さんはそれを見て頷くと、同じように私の隣に少し離れて座った。 それから、持っていたバッグを膝の上に載せて、ゴソゴソし始めた。 どうして良いか分からず、黙ってその様子を眺めていると、 「はい、これ持って」 と、突然空の紙コップを渡された。 「え?」 受け取ったものの、まだ事態が呑み込めず、マヌケな声を上げる。 しかし松浦さんは、尚も私に構わず、バッグの中から次々と何かを取り出し、ベンチの上、私と彼の間に並べていく。
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