５秒マン

ーーーーあれから五年。

使い方次第で未来が変わると言った老婆の言葉通りに、俺は仕事で成功し、愛人まで手に入れる事が出来た。

課長と言う役職も今年に入って手に入れた。

御陰で、『天皇課長』と意味の解らない呼び方をする社員も増えたが、それはそれでいい。ただ、課長よりも天皇の方が確実に役職が上だという事だけが欠点な呼び方だ。

浮気に関しては、妻にバレていない。毎日の言動を見る限り、妻は俺に対して疑っている気配は全く見せない。

妻と会話をしていて面倒な話題を妻が切り出して来るたびに時間を戻し、会話内容を修正している。

家事育児の手伝いも怠ることなくやっている俺は、妻に疑われる要素など何処にも無いのだ。

かぐやとこうやって夜に会うのも二週間に一回程度。

絶対にバレる事は無い。

そう思いながら喫茶店に入った俺の目に、かぐやと一緒に座っている妻の顔が飛び込んでくる。

妻と目が合った瞬間、俺は勢いよく懐中時計を開いた。