神のひとり子

聖司は今までもらったプレゼントを順番に思い出した。あれはここからやってきたのだ。そして今、箱は空になっている。

「君のお母さんはこう頼んだんだ。『そして十歳になったら、本当のことを話してください。その頃にはきっと、聖司は強い子になっていると思います』と」

「本当のこと？」

聖司の声は震えていた。

　今井先生は深々とため息をついた。カーテンで仕切られた三畳ほどの狭い空間で、上から蛍光灯の白い明かりをあびた先生は、いつになく老いて見えた。

「君のお母さんは、ずいぶん前に再婚して新しい家庭を持っている。君の妹か弟かも生まれているはずだ。君をその家庭に連れていけなかったのは、そういう条件のもとに再婚したんだと、私は思っているんだ。

　聖司くん。先生は大人だからね、君のかわりに君のお母さんに連絡をとることはできる。でも、君は本当にそうしたいかい？」

どぶり、と胸の中で心臓が一回転した気がした。

　お母さんは僕のために、一生懸命働いているんだ。
　本当は僕に会いたいけど、我慢してしてるんだ。
　いつか二人が一緒に暮らせるように、そのために頑張ってるんだ。

　ずっとそう思って生きてきたのに。