神のひとり子

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 「さあ、今日からクリスマスの準備を始めるよ」  若い神父は子供たちの前で微笑み、アドベントクランツのロウソクに火をともした。すばやく手首を返してマッチの火を消す。  説教台の上に明るいともしびが揺れた。常緑樹の葉で飾られた四本のロウソクの一本に火が入る。日曜礼拝のたびに一本ずつ増やしていき、四本すべてに火がともれば、聖誕祭(クリスマス)の特別礼拝となる。  今は本礼拝の前の教会学校の時間だ。礼拝堂の二階の部屋には、信者の子供や近くの児童施設の子供たちが数十人、行儀良く座っていた。 「今年降誕劇(キリストの誕生を演じる劇)に出てくれる子は?」  はーい!  はーい!  元気に手があがる。劇に出たがる子は活発で声が大きな子が多い。 「今日は配役を決めるから、何がやりたいか考えておいてね」  私、天使!  マリア様!  女の子たちが騒ぎはじめる。 「あと聖歌隊をやってくれる子は?」 こちらは、少し年長の子供たちが静かに手をあげた。 「本礼拝の後、小石川姉がオルガンとあわせてくれるそうだから、礼拝堂に残っててね」
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