神のひとり子

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やや細身で優しい面立ちの神父は、日本人離れした青い瞳を細めた。 「今年もみんなのおかげで、楽しいクリスマス礼拝になりそうだなあ」 そしてさっきから部屋の隅で、異質な存在感を放っている青年のほうへ顔を向けた。 「そして――――去年からいる子は知ってるよね。今年もアメリカの宣教師会からマイケル先生がクリスマスのお手伝いに来てくれました」 ぱちぱちと拍手の中、文句のつけようのない立派な体格の金髪の青年が、説教台の脇に立って明るい声をあげた。 「みんな一年ぶりだなっ。これから一ヶ月よろしく」 どす、と子供たちに見えないところで、脇腹に神父の肘鉄が入る。 (もう少し日本語が不自由なふりとかできないんですか) (いやもう、顔なじみの子もいるしね) (人間じゃないってバレますよ) (バレても大丈夫。ここは神の家) 満面の笑みをうかべる少し風変わりな天使に、神父はわずかに苦笑した。マイケルという仮名も、天使の名ミカエルを英語読みになおしただけだ。
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