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神父の名前は、聖司(せいじ)という。十年前まで彼もまた、聖ルカ愛児園で暮らす子供の一人だった。
聖ルカ愛児園はこの教会と同じ宗教団体が運営する児童保護施設だ。同じ宗教団体が運営している慈善施設だったので、聖司も小さな頃から当然のように教会に通い、神に祈った。
聖ルカ園で暮らす子供たちの中には、身よりのない遺児もいれば、両親の都合で一時的に預けられているだけの子供もいた。
聖司は自分の境遇をめぐまれたほうだと思っていた。父親の消息は知らなかったが、母親は彼の誕生日とクリスマスにはかならず贈り物とカードを届けてくれたからだ。
たとえ会えなくても。
一緒に暮らせなくても。
自分の母親は、いつも自分のことを気にかけている。自分のために今日もどこかで一生懸命働いてくれている。
それは教会で聞く難しい聖句よりも、ずっと暖かく強力に聖司の心を支えてくれた。
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