神のひとり子

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 十歳の年。クリスマスを前に聖司少年は悩んでいた。  ほんの少しまえから流行りだしたコマのおもちゃがどうしても欲しい。  それは簡単にいうとベーゴマのようにすり鉢状のバトルサイトで互いに回して戦わせるコマなのだが、メタルパーツをつけて重心を変えたりするカスタマイズ要素がウケて、当時近所の小学生男子はこれに夢中になった。  今までこんな気持ちになったことはなかったのに。クラスのみんながそれを持っていて、その話しをし、遊ぶ約束をしているのを見ると、焦燥感似た気持ちが心を焼いた。  うらやましいのだろうか。  仲間に入りたいのだろうか。  そのどれも、ちょっと違っているような気がしていた。それでも、あきらめる気持ちにはなれなかった。 「今井先生、ちょっと内緒の話があるんですけど」 事務室に入り、施設長の今井先生のところへ行った。当時、すでに六十台だった今井先生は若い頃は教会の神父をしていたと聞いていた。
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