幕間劇

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これは、遥か昔     とてもとても遠い        あの空と海の果ての向こう、彼方の国のお話です  それは、とてもとても悲しいお話。  昔々、「蒼天(そうてん)の湖」と呼ばれる深く大きな湖がありました。 湖は山脈から流れ出る清流や、清らかな雨水で満たされており、色とりどりの魚が生き生きと泳いでおりました。晴れの日には日の光を反射し、数多の宝石が湖面の上を踊るようでした。また雨の日は、湖面に落ちる小さな水滴をその母なる腕に抱くようであり。月夜には、あの空高く輝く月を湖底に沈めたかのように、二つの月が夜空と湖面に輝くのでした。  湖のほとりに、それはたいそう美しく立派な古城がありました。 古城の主は蒼の民を統べる王。蒼の民は、古くよりこの湖の傍近くに集落を築き湖と共に静かに時を刻んでおりました。王は民を心から慈しみ、また民もこの心優しい王を敬愛しておりました。  さて、王には妻と、一人の王子がおりました。  王子の顔(かんばせ)は誰もが一目見てはため息をつき、心を奪ってしまう美しいものでした。その美しさゆえに、小鳥は空へ羽ばたく事を忘れ、草木は王子を喜ばせたく、その花々を王子のために毎日咲かせてしまうほど。万物に愛されておりました。 そして不思議なことに、かの王子の瞳の色は対をなさず魅惑的な輝きを帯びていたのです。  
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