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ある土曜日――
朝からオレは、ある男をマークしていた。
それはA設備という中小企業の社長だった。
その自宅には、寝たっきりの老母と、
やつれた妻と男の子がいた。
契約を夕方に完了するため、
金融業者に渡す――
証明書類を持っていた。
彼は、非常に緊張した顔のまま、
軽トラックで出て行った。
オレはマイカーで追う。
踏み切りで倒れた老女を見つけた彼は、
親切にも病院に運んだ。
ところが、誤解した主婦からの通報で、
駆けつけた警官に逮捕されてしまった。
ようやく誤解と分かって
開放されたのは、昼過ぎだった。
金融業の事務所は……
すでに閉まっていた。
結局、金策に失敗した彼は、
落胆し頭を抱えていた。
その姿を見ていたオレは……
(いっちょう、やるか)
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