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季節は冬。まだ初冬といえど、地域が地域故に雪は降るわけで、比較的寒い日が
続いている。
俺はしゃりしゃりと雪を踏み鳴らしながら隣を歩く俺の彼女を見て震え上がっ
た。
俺の彼女は変わり者で、冬なのにスカートは短いし、コートも着ない。スタイル
がわかるほうがいいからと強がっていたけど、マイナスを記録する北海道の寒さは
乗り越えられないと思い、せめてこれだけでもと先日マフラーを買ったけど……
「渡したいものがあるんだけど」
そういって彼女を止める。
「どうかな? 君に似合うと思ったんだ」
俺はいいながら彼女の首にマフラーを巻いた。彼女はそんな俺をじっと見つ
め返し……ただただ、物欲しそうな顔をする。
どきりと俺の心音が加速する。あきらかに何か欲しがっている彼女。頬を赤らめ白
い息を吐く彼女が口にしたのは、思いもよらない一言で……
「これだけ、ですか?」
真冬の寒さと同じくらい、彼女の言葉は冷たかった。
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