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「……えっ」
主は目を見開いて、
青ざめる。
更には、少しよろめいて、
2、3歩後ずさりをする。
「………何で、嘘…よね?」
それは、いきなりだった。
御方に目配せすると、
それは楽しそうに楽しそうに笑っていて。
ああ、これは何か
僕は失態を犯したんだなぁと察した。
どうやら、
御方も助けるよりも、
この状態を享受する方を選んだようだったから、 どうしようもない。
本当に何がしたいんだ、この御方は。
今はただ驚いて
怯えているような主の容態が心配だから、
其方へ駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
小刻みに揺れる小さな身体を抱えながら、
うわごとのように少女は呟く。
「だって、こんな展開、なかった…。
もう、もうすぐ、この世界が終わっちゃう。」
……なるほど。
僕が能力をもらったのは、
つい最近、
多分500回目ぐらいからの事だったのだろう。
だから、
その変化が怖くなってしまったのに違いない。
彼女は僕に目を合わせずに、
ただ、御方をじっと見つめて、
そっと涙を流している。
「ただ、先生に好きって言ってもらえるだけで良かったんだよ。」
小さく、小さくささめいた声。
それを拾った御方は、凛と尋ねる。
「好き、と言ってから、私が死んだら、貴女も死を選びますか?」
「ぐー先生が好きって言ってくれたら、私はどこでもついて行きます。」
その眼は、何よりもまっすぐで、
そこには狂気の一つも見えなかった。
しかし、
だからこそなのか、
麗人は少し眉をしかめて、深いため息を吐く。
少し切れ長の眼が見開かれる。
「少し気分が悪いので、出て行ってくれませんか」
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