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僕は、もう見てられないし、止めたい。
けど、止めたら、彼は居なくなる。
そして、貴女は彼を追いかける。
「そろそろ、主を止めてはくれませんか?」
出来るだけ眉尻を下げて、
困った表情で頼んでみる。
「今のあの子を、下手に止める事こそ危険ですよ。
まあ、面白いといえば面白いですが。」
けれど、御方はそう言って
穏やかに首を横に振るだけ。
御方とは、僕の主の、さらに主人だ。
限りなく黒色に似た灰色の
艶やかな髪を持つ麗人だ。
目は糸のようで、
表情の一切を読むことが出来ない。
彼の隙のなさを表したようだ。
その麗人は柔らかなベッドに
横たわっていて、
もう身体は半分透けている。
そう、もう彼は持たない。
確か、あと2日で亡くなってしまう。
けれども、いつも、
どんな時でも飄々としていて、
楽しそうな魔法使いだ。
「あの子、何回これ続けると思いますか?」
くつくつ、と抑えながら笑う御方。その表情は読み取れない。
だから、少し感情を読んでみる。
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