我が主の奇行

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「えっ……。」 驚いた。 その感情に思わず、 2,3歩後ずさりしてしまう。 「貴方様でも、 悲しいという感情を持っていたのですね。 それも、我が主に向けての。」 「おや、能力の大盤振る舞いしたのを 逆手に取られましたか。 いやはや、失態」 「僕は序の口です。 主なんて逆手どころじゃありません。」 そう、 彼は自分に仕えていた魔法使い達に 好きな能力を一つずつ預けたのだ。 その時の彼の言葉を 引用するなら 『私が死ぬと消えてしまう技術です。 生きている者に継承しておきましょう』 だそうで。 我が主は『時間を戻す力』を預かった。 僕は使い魔の分際だったのに 御方の気紛れで 『感情を読む力』を預かることになったのだ。 「あの子に永久に囚われましたからねぇ。」 「我が主から、記憶消せば良いのでは?」 「記憶を消す能力も譲ってしまっています。 あとは死を待つのみでした。」 「ああ、失念してました。 更に、その死が阻害される事も失念してましたし」 僕も、彼も、穏やかな口調で話す。
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