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「ねぇ、ぐー先生と、何、話してたの?」
どろどろに溶け切った綿飴みたいな表情で、
此方をじっと見詰める我が主。
本来の主は、
いつも僕の前では主であろうとするのだ。
けれど、
時間を巻き戻して精神的に
疲れ切っているせいで、表情が全然隠しきれていない。
主は今、大きな諦めのような気持ちを持っている。
詳しくは読み取れない。
ただ、その諦めのせいで、この状態が続いている気がした。
「返事。」
「はい、主についての会話です。」
催促されて思わず、
当たり障りのない答えを適当にした。
とは言うものの、
これ以外に正しい答えなんて見つからない。
主は、本当に嬉しそうに微笑んで、
しかし一瞬悲しそうに笑って、
また狂気を孕んだ笑みに戻る。
「まぁ、これ以外の答えだったら、どうなっちゃうか分からなかった。うん、及第点かな。」
くすくす、と潜めた笑みを浮かべる。
そして、ニコリという人形めいた笑みを貼り付ける。
「見張り役、ご苦労。
もう、帰って良いし、人の形じゃなくなっても良いからねぇ」
手をひらひらと振って、暗に帰れと促す主。
此処で帰らない理由も、抗う理由もない。
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