時間を巻く

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 普段から品行方正、成績優秀なコイツが冗談を言って笑う姿なんて見た事がない。  だからこそ、絶対に『嘘』だと分かるような事であっても、信用するだろうという傲慢な自信が、安達の口元に表れているような気がした。  こうなったら、信じたフリをして、最終的には俺が大どんでん返しをキメて、賢い安達くんを扱き下ろしてやろうじゃないか!  俺はじっと彼を見て、次の一手を待つ。  すると彼は徐に、自分の手首から腕時計を外した。  こげ茶色の革ベルトに白色の文字盤。  ローマ数字インデックスのシンプルで何の特徴も何の変哲もない時計だ。
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