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◆◆◆
朝8時20分。登校。着席。
俺の意識が明るくなりつつあるからなのだろうか、不思議と多くの視線を感じる……。
いつもよりも、見られている感覚がある。
まあ、この感覚が俺の自意識過剰に由来するものであれば、本当に俺の性格が明るくなりつつあるという事であるし、本当に見られているのであれば「善行」の効果が現れ始めたのだとも思える。
どちらにしても、俺にとっては良い事なのである。
今日は、保健室の先生に良い報告ができそうである。
ーーーガラッ
突然、教室の扉が開けられ、担任の中田先生が現れた。小太りの中年男性である。
まだ授業開始時間までに、少し時間がある……。何か用事でもあるのだろうか。
「おい。亮。ちょっと来なさい。」
はい……?
俺の呼び出しが、用事だった。
中田先生は俺を廊下の隅の方に呼び寄せた。
何ですか?という俺の視線を感じ取った中田先生は、こう言った。
「実はな……お前が、女の子を誘拐しようとした、とか……猫を殺していた、という話が学校に来ているのだが……本当にやったのか?」
衝撃。驚愕。
目の前が真っ暗になった。
俺は責められるような事は何一つしていない自信がある。
「善行」こそ行っているが、犯罪じみたことはしていない。
その確信はある。
しかし……
「やっていない。」とは、言えなかった……。
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