疑心

3/3
前へ
/14ページ
次へ
◆◆◆ 朝8時20分。登校。着席。 俺の意識が明るくなりつつあるからなのだろうか、不思議と多くの視線を感じる……。 いつもよりも、見られている感覚がある。 まあ、この感覚が俺の自意識過剰に由来するものであれば、本当に俺の性格が明るくなりつつあるという事であるし、本当に見られているのであれば「善行」の効果が現れ始めたのだとも思える。 どちらにしても、俺にとっては良い事なのである。 今日は、保健室の先生に良い報告ができそうである。 ーーーガラッ 突然、教室の扉が開けられ、担任の中田先生が現れた。小太りの中年男性である。 まだ授業開始時間までに、少し時間がある……。何か用事でもあるのだろうか。 「おい。亮。ちょっと来なさい。」 はい……? 俺の呼び出しが、用事だった。 中田先生は俺を廊下の隅の方に呼び寄せた。 何ですか?という俺の視線を感じ取った中田先生は、こう言った。 「実はな……お前が、女の子を誘拐しようとした、とか……猫を殺していた、という話が学校に来ているのだが……本当にやったのか?」 衝撃。驚愕。 目の前が真っ暗になった。 俺は責められるような事は何一つしていない自信がある。 「善行」こそ行っているが、犯罪じみたことはしていない。 その確信はある。 しかし…… 「やっていない。」とは、言えなかった……。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加