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ーーージリリリリ……
朝7時。起床。
それが俺の生活リズムの一部であり、また、この目覚ましの音も散らかった部屋も、いつも通りだ。
俺はスマホのアラームを止め、二階の自室から一階のリビングへと降りる。
リビングには既に、父さん、母さん、妹が揃っており、全員例外なく忙しない。
スーツに着替える父さん。
朝飯を作る母さん。
一足先に、朝飯にありついている妹。
この妹も、食べ方は、忙しない。
朝飯の方が、逃げて行きそうな勢いである。
「おはよう。亮ちゃん。」
「おはよう。亮。」
「おはよ。お兄ちゃん。」
俺は、おはよう、と頷いた。
そして、驚いて、妹を見つめた。
妹は、俺の視線に気付いたのだろう。「……何?お兄ちゃん?」とモゴモゴと口を動かしながら、箸をくわえたまま尋ねてきた。
なんでもない、と視線を逸らし、朝飯を食べ始める。
再び、怪しまれない程度に妹を……正確に言えば、妹の頭の上を見る。
<ウマい>
文字が、浮かんで見えるのだ。先程までは<おはよ>と、出ていた。
何で?と思うが、理由なんて分からない。昨日までは、こんな文字は見えなかった。
思うに、妹の思っていること……つまり「心」が、文字通り「読めている」のだと考えられる。
しかし、親の頭部を見ても文字は浮かんで見えない。
……妹に対してだけ?
そんな事を考えていると、また妹を凝視してしまっていたらしく「……私の頭に何か付いてるの?」と、不機嫌そうに尋ねられてしまった。
いや、なんでもない、と目を逸らした。
数瞬の後、妹の食事が再開される。
この時、妹の頭上には……
<キモい>
……と、浮かび上がっていた。
傷付くなあ……。
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