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◆◆◆
朝8時。高校までの登校中。
家から高校までは3キロメートル程なので、自転車登校である。
その道中。猫の三竦みに出くわした。
いつもこの道でケンカしているメンツである。
黒猫vs白猫vs三毛猫という構図で、「ニャー」だとか「シャー」だとか、奇妙な声まで出してにらみあっている。
俺はいつもこの戦いを見て、猫好きの人達の「黒猫が好き、白猫が好き、三毛猫が好き論争」を思い浮かべてしまう。
実際に、そのような論争を聞いた事はないのだが、人間の論争を当の本人……もとい本猫が闘争で決着を着けようとしているようで、面白く感じるのだ。
いつも、少し離れた場所から数分間、この闘争を眺めるのも、俺の日課である。
今日も俺は、自分の日課をこなしていた。そしてやはり、その時、猫の頭上に文字が浮かんでいた。
<コノヤ…><噛み付…>
驚いた事に、三毛猫の「心」だけ、読めなかった。
そのうえ、 この能力の制限なのだろうか、黒猫と白猫の「心」も3文字までしか読めないのだ。
4文字目は読めない程ボヤけていて、それ以降は全く読めなくなっていた。
この能力、地味に使えない……。いや、3文字だけでも見えるだけ、俺は他の人よりも優位なのだろう。
そう思うことにしよう。
そこまで考えて、腕時計を見た。
8時15分。
そろそろ行かなければ、遅刻してしまう。
俺は、再び自転車のペダルを踏み込んだ。
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