可能

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午前10時。3時間目の前半。 高校に到着し、授業を受けている。 俺は授業なんてそっちのけで、例の能力について、朝から今までに分かったことをノートに書き出していた。 1,人の「心」が「読めて」いる。 2,「心」が「読める」相手と「読めない」相手がいる。 3,「読める」相手の場合、頭上に浮かび上がる文字数には、3~6文字程度の個人差がある。 4,文字が切り替わったり、浮かび上がったりする瞬間、ポンッというような音が聞こえる。 そして、「5」と書こうとして、シャーペンを置いた。 あとは何も分からない……。 「読める相手」と「読めない相手」については、どのような法則性があるのか、まだ分かっていない。 まあ、分からなくても問題は無いのだが、なんとなく気になるのだ。 ーーーポンッ…… 後ろの方から「心」が文字になる音が聞こえた。 誰かの文字……つまり「心」が切り替わったりらしい。 何を思っているのだろう。 そう思って振り返ると、真後ろの席の女子の頭上に文字が浮かび上がっていた。 <消しゴ…> 消しゴム……?が、どうしたのだろうか? 女子の視線を見て、理解した。 ああ、落としたのか……。 しかも、よりにもよって彼女の消しゴムは俺の足元に落ちていた。 授業中、地味に困るシチュエーションである。 あまり親しくない、前の席の、異性の生徒の足元に消しゴムが落ちてしまった。 ……なんたる不幸か。 そう思った俺は、消しゴムを拾い、彼女に手渡した。 彼女は一瞬、驚いたような顔をしたあと、少しニコやかな表情になり、「ありがとう。」と小声で囁いてきた。 感謝された。 それを、俺は、単純に嬉しく感じた。 僅かな時間、放心してしまい、すぐには前を向かないでいたところ…… 「前を向けっ!!」 ……と、教師に怒鳴られてしまった。 しかし、俺の心には喜びが居座り続けてくれていた。 この能力があれば、俺でも人気者になれるのかもしれない……。 そう思った。
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