駆け出しの記憶

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俺には大切な人がいた。 誰よりも大切で、誰よりも大切にしていた。 ───大好きだったんだ。 同じ日、同じ病院で生まれた俺ら。 家も隣。 必然的に幼馴染になった。 その子は母親譲りの綺麗な顔をしていて、常に一緒にいた俺まで誇らしかった。 その子の笑顔は、綺麗で、儚くて、消えてしまいそうな花を連想させるモノで。 今となってはもう見れない笑顔が忘れられなくて。 俺が、殺した。 もっと、注意していれば。 あそこで、怯まなければ。 不良の事故だったらしい。 事故ったトラックのブレーキとハンドルが利かなくなっていたらしい。 運転手は葬儀の後ずっと、ずっと謝って来ていた。 ブレーキとハンドルは、誰かが意図してやったものだとしか考えられないのに、警察側は事故として片付けた。 誰がやったとしても、もうその子は戻ってこない。 だから─────
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