65人が本棚に入れています
本棚に追加
公園のベンチに腰を下ろし話をしていると、フェンスの向こうを同じ制服を着た生徒が横切るのが見えた。
「圭介、あれ小湊さんじゃない?」
「本当だ。だいぶ先に帰ったのにこんな所で何してるんだろう?」
見ると、トートバッグのような物を手にしている。
「ちょっと俺、話しかけてくるよ」
「おお、頑張って」
圭介は走って小湊さんの所へ向かうと、後ろから声をかけた。
僕は公園のベンチから二人が話しているのを見守る事にした。
昨日のアドバイスを思い返しながら見ていたが、なにやら雲行きが怪しそうだ。
小湊さんが俯いて、圭介は慌てている。
何事かと案じていると、圭介が小湊さんを連れて戻ってきた。
「どうしたの?」
小湊さんを見ると目が腫れている。泣いているようだ。
「なんか、飼ってる猫が家出しちゃって探してるんだって」
決まりが悪そうに圭介は鼻を掻いている。
小湊さんは不安を思い切り浮かべた顔で硬く口を結んでいた。
「チラシを持って聞いて回ってるらしいんだけど、俺達も手伝わない?」
「もちろんいいよ」
「本当に?山田君、白石君……ありがとう」
「じゃあ、手分けして探そう。ある程度聞き込みしたら、一度落ち合って現状確認でいい?」
小湊さんに回った所を確認すると、僕等はそれぞれチラシを手に街を彷徨った。
最初のコメントを投稿しよう!