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「肉屋は手掛かりなし、と」
お客さんのいなくなったタイミングを見計らって肉屋のおばちゃんに聞くも、コタロウについて何も得られなかった。
「後は魚屋か……」
これだけ何の情報もないとなると、いよいよ後がない。
小湊さんのためにもコタロウの消息が掴める事を祈った。
一縷の望みをかけて魚屋の前まで来ると、店の親父さんが僕に気付いて駆け寄ってきた。
「いやぁー!良かった、店まで行こうかと思ったんだけどよぉ、うちの母ちゃんが配達行っちまってよ、店番がいないしどうしようかと思ってたとこだったんだよ」
状況が飲み込めず戸惑っていると、魚屋の親父さんはさらに続けた。
「あんた、あの綺麗な姉ちゃんといつも一緒にいる子だろ?さっき綺麗な姉ちゃんがうちで刺身を一皿買って行ったんだけどよ、お釣りを渡し間違えちまってさ、悪いんだけど渡しといてもらえると助かるんだわ。よろしくな」
そう言って僕に小銭を握らせると、店頭に戻って威勢の良い声で呼び込みを始めた。
「白石君、大丈夫?バイト先に行ってくれて大丈夫だよ」
「いや、小湊さん……コタロウの居場所、多分分かったよ」
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