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そう言えば温室には馨瑠さんの趣味のものを植えてあると言っていた。
一体何を植えていたんだろう。
「そろそろ収穫かなと考えていたんだが……」
肩を落として馨瑠さんは独り言のようにぽつりと言った。
「ごめんなさい!謝って済むとは思いませんが、出来る限りの事をさせて下さい」
小湊さんは頭を下げて謝っている。
「彼が暴れてしまうのも仕方がないさ、もっとちゃんと囲っておけば良かったんだ。まさかビニールを破って進入してくるとは……」
「あの……趣味のものって一体何を植えていたんですか?」
「カノコソウ・イヌハッカ・キャットミント・キャットタイム・マタタビ……そんなところかな」
「それって、つまり……」
「ああ、この温室は温めるためじゃなくて、匂いが漏れないように作ったんだ。私の夢のひとつに猫のためのアロマの開発があってね。その研究で使えそうなものを栽培していたんだ。だから、まあコタロウ君が迷い込んでしまうのも無理はない」
それって完全に馨瑠さんの管理不手際なんじゃ……と思ったが、さすがに口に出すのは止めた。
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