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「知らなかった…棗くんがチェス得意だったなんて。絶対パパに負けちゃうって思ってたから、本当は今日のデート半分諦めてたの」
「……別に得意じゃないけど」
「え…」
「それより、何食べたい?」
「あ…えっと…なんだろ、ちゃんと考えてなかった。棗くんは?」
「何か旨いもの」
今日ランチに行く約束はしていたくせに、何を食べに行くかはまだちゃんと決めていなかった。
そのときの体調にもよるけれど、私は揚げ物とかはあんまり食べれない。
すぐに胸が悪くなってしまうから。
味の濃い料理も、なるべく避けるようにしている。
だから外食は、健康な人よりも意外と気を使う。
棗くんもそれをわかってくれているから、どこか一緒にご飯を食べに行くときは、何を食べるか私に決めさせてくれる。
……その度に、申し訳ないって思ってしまう。
「和食が食べたい」
「和食かぁ…じゃあ、どこか美味しい定食屋とか……」
そのとき。
ひらめいてしまった。
美味しい和食。
どこか食べに行くのも、もちろんいいんだけど。
……どうせなら、作ってあげたい。
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