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私はずっと寝室に吊るしっぱなしだった喪服を今日やっと片付けた。 久しぶりに開けたその部屋。窓からはオレンジの西日がさしていて、目を細めた隙に、ずっと閉じ込められて滞っていた空気はリビングに続くドアの向こうへ溶けていく。 オレンジ色に染められたその部屋には、あたたかな温度があるように見えた。 綺麗に整えられたベッドの上、そこにそっと手を滑らせて子供が父親の背中にするように頬をつけると、そのままその上で身体を丸める。 柔らかく、沈んでいきそうだった。 丸まったまま、誰もいない半分のスペースをぼんやりと見つめて瞬きを繰り返す。 夢なのか現実なのか判断できないほどの、ぼんやりとした寂しさは、少しずつ壁際へずれながら消えていくオレンジの温度を失うみたいに部屋を満たしていった。 私はそこから起き上がると、部屋をでて、またその場所を閉じ込めた。
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