0.1%の可能性に賭ける

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それでも霧島は食い下がる。 「なあ、本当に今のままでいいのか。この子の心臓まで奇形であと数か月の命なんだぞ。可憐は死んじまうんだぞ。きりかは可憐が死んでもいいのか。俺は嫌だ。俺は、今の可憐を受け入れる事が出来た。だから、どんな可憐でも受け入れる事が出来ると思う。今の医療で健康児を作れないのなら、俺はその0.1%の可能性に賭けたいんだ。頼む俺の願いを聞いてくれ」霧島は必死になって頭を下げた。 きりかは、霧島の言う事も分かる。可憐の命はあと数か月だ。後は子どものいない二人の生活を一生送らなければならないのだから。 子どものいる事の楽しさや温かさを知ってしまった今では、その寂しさをどう乗り越えようかと思っているのだ。 「あなた、そのハンカチって本当に時間を巻き戻すことが出来るの。本当に健康な可憐と3人で暮らせるの、もしそれが本当なら私もその0.1%に賭けてみたい。この子を失う悲しみに私は耐えられないかもしれないもの」と言う。 それを聞いて霧島はやっと顔を緩めて微笑んだ。
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