0.1%の可能性に賭ける

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退院する時に泣いている、暗い表情の夫婦を見た。 一緒に退院するママさんが言うには、 「あの人達の子供さんが無くなったのよ。多重奇形児だったんだって。心臓にも手の施しようのない奇形があったらしいよ。顔にも手足にも。可愛そうだね」と呟きながらそのママさんは我が子を見つめ微笑みながら帰っていく。 霧島ときりかは冷汗が出てきた。 「きりか、俺達もこのハンカチを使わなければああなっていたんだな」と言う。 「そうね、あなた、今頃は二人だけのつまらない生活を送っていたのよ。よかったわ。あのお爺さんにお礼をしなくちゃいけないわね」 「あのお爺さんはいないさ。俺あの人達にこのハンカチを渡してくる」と言うが早いか霧島は、走っていきハンカチを二人に渡してきた。 ハンカチをもらった夫婦は驚いた顔をしていた。 その時には涙は止まっていた。 二人の目に映ったのはおじいさんの姿だった。 その事は霧島は知らない。 霧島が帰ってくると、きりかは、可憐と3人で帰っていくのだった。 子供がいる事の幸せをかみしめながら空を見上げて神に感謝していた。                                           終わり
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