0.1%の可能性に賭ける

8/20
前へ
/20ページ
次へ
きりかは母親の本能でわが子の小さな手に自分の指をあてた。 赤ちゃんはきりかの指をしっかりと握り返した。 きりかはこの時赤ちゃんの指先から温もりを感じた。 そしてそれは赤ちゃんからの生きたいと言うメッセージだと思った。 こんなに小さくて、沢山の奇形を持って生まれていても、この子は私の子供なのだ。 きりかはこの時初めての母性の目覚めを感じていた。 この小さな手に握られた時よりこの子を守らなければという気持ちが芽生えてきた。 頬を伝う悲しみの涙は、生まれてくれた喜びの涙へと変わっていった。 その様子を心配そうに見ていた夫の霧島は「大丈夫か」と一言声をかけた。 きりかは微笑みながら「大丈夫よ。ねえ、あなたこの子にとって私達しかこの子を守ることは出来ないと思うのよ。見てこの子私の指を握り締めているのよ。とても力強くね。お母さん生きたいよってね」と優しいまなざしでわが子を見つめるきりかを見て霧島はきりかの中の母性を垣間見ていた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加