呼ぶ声

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  夏休みに入った昂汰は、小さい頃からの幼馴染みの華澄(かすみ)と涼みがてら宿題をしに図書館へ行くことになった。 「ったく。 何でこんなに暑いかな~」 「昂ちゃん暑いの苦手だもんね」 長い黒髪を上で結わえている華澄は、この暑さでうなだれている昂汰の顔を覗きこんで笑った。 そんな華澄ふお前は平気なのかよ…と昂汰は呟くと、華澄は私だって暑いよと苦笑が返ってくる。 「ほらほら、図書館までもうちょっとだよ~」 華澄は昂汰の背中を押しながら図書館までの坂道を歩いていった。 「ふぃ~、生き返るぅぅ~」 冷房の効いた図書館に入った瞬間昂汰はそんな情けない言葉を漏らした。 その時だった… 『気付いてくれたのですね、煉』 「ッえ!?」 不意にどこからか今にも消え失せてしまいそうな声で声を掛けられた様な気がした昂汰は辺りをキョロキョロと見渡した。 が、図書館にいる誰もが本を探したり読んだりして昂汰を見ている者は誰一人いなかった。  
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