踏み切りの幽霊

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踏み切りの幽霊

 会社からの帰り道、踏切に引っかかった。  向う側に女の人が立っている。当然だが電車の通過待ちだろう。  程なく電車が現れて、たちまち目の前を通過して行く。それと同時に女の人の姿は消えていた。  …正確には、膝から上が消えていた。  踏み切りが上がる。でも、向う側に揃って並ぶ二本の足は動かない。俺の足も凍りついたように動かない。  そうしたら、目の前の線路上から声がした。 「アタシの体、見なかった?」  踏み切りの中に転がっている生首が聞いてくる。その質問が終わるか終わらないかの辺りで俺の意識は飛んだ。 * * *  あの踏切で人身事故があり、亡くなった人がいたことも、以来、時々あそこに『出る』って話も、前からちょこちょこ聞いてたんだが、まさか自分が出くわすとは。  そういえば、その事故はかなり悲惨なもので、被害者の死体は轢かれた時に切断され、生首と足先、それ以外の部分に分かれたとか。  一応ズタズタになったとはいえ、胴体部分もきちんと見つかったらしいけど、切断のショックのせいか、ああいう幽霊が出るって、今思えば聞いたことがあった気がする。  自分がバラバラ死体になるなんて、死んでも受け入れがたいことだろうな。その点俺は、ただの轢死ですんでよかったよ。  気絶した後線路側に倒れ、次の列車に轢かれて即死。列車の人身事故には違いないけど、そこまで死体に損傷がなくてよかった。  なんてことを考えてると、いまだにパーツを探して出て来るあの人に恨まれそうだから、俺はさっさと成仏することにしよう。  ホント、五体揃った死体になれてよかった。 踏み切りの幽霊…完
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