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距離が開いてるからと言え、油断するべきではなかった。
「がふ……」
口から血が零れる。どこかの臓器がつぶれたか、医学に詳しくないため分からないが、どうやら結構な重症らしい。
口の中に鉄の味が広がる。
やべぇ、真面目に死ぬな、コレ。
そう客観的に自分の終わりを捉える。
怪物はオレを貫いたまま、空に掲げその前足を振り下ろす。
その威力でオレは、投げ飛ばされ地面を跳ね、社の障子を突き破り、棚にぶつかり止る。
地面で皮膚を削り、骨にもヒビが入り、小さな木の枝なども刺さってしまった。
これもリバティギアの能力のせいなんだろう。
普通の人間なら死んでいる怪我も、こんな風に少し生きながらえるようになっていた。
身体が動かない。
身体中が痛い。
メガネのレンズは割れ、視界がぼやける。
聞こえてくるのは、怪物の足音だ。
その足音は、電気椅子に縛られ、電流を流すスイッチを押す瞬間を思い浮かばせた。
最後の最期の瞬間は、オレのモノだった。
そう諦めることにした。
死ぬって、なんだろうな。
心臓が止まるだけ、脳に酸素が送られなくなるだけ、その温もりがなくなるだけなのに、なんでこんなに怖くなるのだろう。悲しくなるんだろう。
一度、死について書いたことがあった。今ほどではないが死に近づいた事もあった。
それでも、何が怖いのか、悲しいのか分からなかった。
後悔があるから、何かを伝えてないから、何かを残してないから、自分の遺伝子を残してないから。
どれが答えか解らない。
でも解っていることはあった。
もう死ぬんだろう、と。
『でも、死にたくないですよね』
立ち向かっても、勝てるはずが無い。
『それでも、立ち向わなきゃ。今までの君はそうやって生きてきたでしょ?』
声がする。
オレを、励ます声が。
立ち向かっても、勝てない……。
生きる力がないんだ……。
『その為の力が欲しいですか?君の運命(これから)を選ぶとしても?』
それは、きっと自分で選んだ道だ。
後悔なんて、無い。
『君は、きっと戦える。でも、今とは変わってしまう。君だけの運命は無くなってしまう……。それでも、私の手を掴んでくれますか?』
ただ、優しさで差し出してるのではなく、自分を受け入れて欲しい、そんな少し泣きそうな、祈るような声に聞こえた。
ああ、そんな風に言われたら拒めないじゃないか。
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