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きちんと定まらない、ぶれてばかりの視界に、ただ一つだけはっきり小さな手が見えた。
「オレは、その手をとるよ」
力なく、ゆっくりと右手を上げる。
そして、掴む。
大切な何かを燃やして作る未来の火種を。
瞬間、身体が炎に包まれる。
その炎は神社の社を焼いているのに、オレ自身を焼き尽すことは無かった。
まるで、守るように包んでいた。
そのオレの天井に伸ばした右手には、一振りの刀が鞘に納まって、握られていた。
鞘には、炎と楓をあらわした装飾がしてあった。
炎の中で舞い踊る楓、と言ったところか。
「オレらしい刀じゃないか」
刀を通じて、力が流れ込んでくる。
オレは、四肢に力を入れて、焼ける社の中で立ち上がる。
はっきりし始めた視界で怪物を捕らえる。
怪物は、オレのこの様子に驚いたのか、炎に恐れたのか、いや両方か。
その場にとどまり、現状を確認していた。
左手を横に振って炎を払い、オレは抜刀し、その刀の切っ先を怪物に向ける。
少し、朱色に染まった刀身に魅せられながら
「リベンジ、させてもらおうか」
切っ先を向けたまま、オレはゆっくりと怪物に近づいていく。
刀を抜いた瞬間から、この力の使い方が頭の中に流れ込んできた。
どうすれば、怪物を斬れるか。
怪物は、それに反応し、その太い片足を槍のように突き出してくる。
さっき、オレのわき腹を穿った一撃だ。
一撃を刀で受け、別の方向へ逸らす。
その足に刀の刃を当てながら、怪物に向かって走る。
刃が、怪物の甲殻を削り、火花を散らす。
刀に力を入れて、刃の触れているところから、足を切り落とす。
「ギャァシャアアアアアアアア?!」
銃弾をはじいたから、刀も通らないと油断していたのか、驚いたような悲鳴をあげた。
本来なら、この刀でも斬れないだろう。
だけど、刃をオレの得た『炎の力』を使い熱し、高熱にした。
つまり、ただ斬ったのではなく、溶断したのだ。
……どんな原理かは知らないけど、「刀を熱く」って思っただけで出来た。
もう片方の足を、オレを殴り飛ばすために横から薙ぎにきたが、これも同じように叩き斬る。
これで、両前足はもう気にしなくていい。
オレは走り出し、飛び上がる。
刀を、頭の上から振り下ろし、怪物の人型部分を真っ二つに切り裂く!
紫色の液体(血?)がはねたが、それはオレに届く前に、まだ少し付いていた炎の熱で蒸発した。
もしかしたら毒があったかもしれない。
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