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名を付け直せと両親に詰め寄ってみたが『それは無理』と勝ち誇った顔。
この国では一度付けられた名は死ぬまで変更する事が出来ない。これは法律で決まっている。破れば死罪だとかぬかしやがった。
俺は、顔面グーを入れたい衝動しょうどうを必死で抑えなければならなかった。
グレて、道を踏み外そうとも考えた時期もあった。
だが、俺は思った。どう足掻こうが国家権力には勝てない。俺がグレようが『彦麻呂の呪い』が消える事は決してないのだと。これは俺が背負うべき業なのだと。
当時厨二病だった俺は『自分は呪いと闘う悲劇の主人公』なのだと言い聞かせて、人格形成に重要な影響の出る時期を乗り越えたのだった。
「とにかく……さっさっと着替えて降りてきなさい。大事な話しがあるから」
そう言うと姉ちゃんはさっさっと部屋を出て行ってしまった。
「大事な……話?」
一瞬、脳裏に『サプライズパーティ』の文字が浮かんだが頭を振って打ち消した。
ありえない……あの両親、姉にかぎって、それだけは『絶対にない』と断言出来る。
では、なんだろうか。寝ぼけ頭でそんな事を考えていると指に違和感が。
よく見てみると、右手の人差指にインクがべったりと付着していた。
「いつのまに付いたんだ?」
俺はぶつくさ言いながら2階の流しで手を洗うと、自分の部屋に戻り衣服を着替えた。
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