塁上のルパン

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〇結子のマンション エレベーターの最上階に降り立つ結子。廊下を歩いていくと、結子の部屋の前で、慎吾が待っている。 結子「あ~ら……」 慎吾、背中に隠していた一本しかないバラの花束を突き出す。 結子「え?」 慎吾「ボクのおこづかいじゃ、これしか買えなかった」 結子「(クス)……そう」 結子に花を渡すと、照れてすぐに自分の家のドアを開ける慎吾。が、手を止める。 慎吾「ボク、ちょっとだけ英語が得意だって思い出したんだ。洋画が好きだから、いつかそれを字幕なしで観られるようになりたいって……そのために頑張ってみようかって。……そういうの、ダメかな?」 微笑む結子。 結子「いいんじゃない?」 慎吾の肩がうれしそうに揺れる。 慎吾「それがボクの『塁上のルパン』だよね」   部屋に消えていく慎吾を見送る結子。それからバラを見つめ直す。 〇同 結子の部屋 結子、一輪挿しに水を注ぐ。 結子の活けるバラに目に留める朱子。 朱子「やだ、あんた、花なんかくれる男がいたの?」 結子「(すまして)ええ。まあまあいい男」 朱子「誰、誰っ?」 結子「お隣りの悩める少年」 朱子「なーんだ、中坊か」 結子「モテる娘にカンパーイ!」 結子、朱子「……カレー、食べに行きますか」   飛び出していく結子と朱子。   後には一輪挿しのピンクのバラが残されている。 (終)
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