塁上のルパン

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塁上のルパン

〇千石マリーンスタジアム ピッチャーが振りかぶった瞬間、一塁から二塁へスタートを切るランナー。 N「足が速いだけでは盗塁王は取れない。ピッチャーのモーションを研究し、スライディングの技を磨き、凡ゴロでも塁に残れる技術……。だがそうやって盗塁王となった選手も、最初に憧れたのは華やかな4番ホームランバッターではないだろうか――」 タッチをかいくぐり、土ぼこりを巻き上げて二塁へ滑り込む岸谷透(24)。 野球放送「セーフ! セーフです! 岸谷、今シーズン48個目の盗塁成功! 『塁上のルパン』と呼ばれるだけあって塁を盗みまくります」 オーロラビジョンに電光の文字が輝く。『岸谷選手、通算100盗塁おめでとう』の文字。 プレゼンターから特大の花束を受け取り、観客席に大きく手を上げる岸谷。 〇同 一塁ベンチ裏 選手1に食いついている野々村結子(26)をハラハラして見ている松本(22)。 結子「あの大事な場面で空振りなんて……やる気あるんですか?」 突き飛ばされ、尻餅をつく結子。 結子N「あたしは東都スポーツのプロ野球担当記者で『激辛キッコ』と呼ばれている。なぜならあたしの書く『ファウルチップ』は選手を一人ずつこき下ろすコラムとして名物だからだ」 両手に大きな花束を抱えた岸谷が出てきて記者達がざわつく。 記者1「100盗塁、おめでとう、岸谷クン」 記者2「ほんっとに足が速いねえ。さすが『塁上のルパン』。盗塁の天才」 岸谷「どーも、どーも」 岸谷の投げキッスのパフォーマンスにドッとウケる記者達。 岸谷「やあ、激辛キッコさん」 岸谷、結子が立ち上がるのに手を貸し、大きな花束の一つを差し出す。 岸谷「どうぞ。嫌いでなければ」 結子「そりゃあ……あたしだって女だもの」 松本「へええ。キッコさんて女だったんスかあ……」 結子に叩かれる松本。 岸谷「似合いますよ」 結子「……口が達者ね」 岸谷「そちらの毒舌ほどじゃないですよ」 結子「フン」 が、花束に結子は嬉しそう。
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