塁上のルパン

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〇図書館 新聞の縮小版を調べている慎吾。一つのコラムで手が止まる。 『コラム ファウルチップ 弱気な新人岸谷。4番を目指すと豪語したドラフトからまだ半年。才能がないとあきらめることは誰にでもできる。ならばさっさと舞台を降りて違う世界に身を投じたらいい。  もしも野球を続ける気なら、なりふりかまわない姿をさらけだせるはずだ。  自分の居場所は自分で作るもの。誰かに用意してもらうものではない。        BY キッコ』 慎吾、手が震える。 慎吾「自分で……作るもの」 〇今中家 ノートを一生懸命整理している慎吾。 美紀「偉いわ、慎吾ちゃん。よくお勉強して」 慎吾「お母さん……、ボク、いろんな科目の中で、英語がちょっとだけ得意みたいなんだ」 美紀「慎吾ちゃんは何だってできるわよ。お父さんに似て頭いいんだもの」 慎吾「……」 ドアの音がして、今中が帰ってくる。   ブツブツつぶやき続けている美紀。 今中「美紀。就職、決まったぞ」 反応しない美紀。 慎吾「お父さん……」 今中「(息をつき)……大丈夫さ、お母さんはお父さんのエリートだった部分だけが好きで結婚したわけじゃない。お父さんはちゃんとそれを証明してみせる」 慎吾「……うん」
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