そのときはプッシュバント

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○喫茶店 森山がパンフを広げ、一生懸命結子に説明しているのが窓の外から見える。 ○同 外 結子が出てくると、高級スポーツカーが横付けにされる。 運転席から顔を出したのは朱子。 結子、肩をすくめて乗り込む。 朱子「入ったの? 女のためのナントカ保険」 結子「検討資料もらっただけ。見たい?」 封筒ごとどっさりのパンフを渡すと、朱子は中からくしゃくしゃになったベタ打ちを見つける。 朱子「何これ?」 結子「――ああ。つまんない下書きよ。仕事以外でこんなの書くの、もうゴメンだわ」 朱子が発車させると、結子はその紙をビリビリと破いて窓から細切れを飛ばしていく。 結子「『いんでぃ』へやって」 朱子「ママはタクシー運転手じゃないっての」 笑いながら窓の風に髪をなびかせている二人。   (終)
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