0人が本棚に入れています
本棚に追加
○カレー屋『いんでぃ』
結子がどぎつい黄色のカレーをかっこみ空にする。
結子「マスター、30倍カレーおかわり」
マスター「はいよ」
肩をすくめて見ている松本。
松本「けど、結局花火だったなんてさ。オレが彼女に謝ったときのあの切なさは何だったの」
結子「必死になると少しはマシよ。あんたでも」
松本「(膨れて)マスター、オレも30倍カレー」
マスター「え、いいの?」
松本「ん……やっぱ、20……いや、10倍にしとく」
マスター「しかし『グレチキが必死で勝とうとする試合が見たかった』……か。すごい理由の脅迫犯だな」
結子「『勝利すればファンはひざまずく。負ければ同じファンが車の前にひざまずいてタイヤを引き裂く』」
松本「え?」
結子「レッドソックスの熱狂的なファンをちゃかしたジョーク。いたのね、日本にもそういうファンが」
マスター「ま、やって良いことと悪いことの区別はつけんとな」
結子「バカなのよ」
結子は二皿目もペロッと平らげる。
結子「あのエセ爆弾犯も、誰だかわからない相手に媚びた話題作りしか頭にない監督、ベンチ、……メディアもね」
○東都新聞 コラム『ファウルチップ』
ファンにはいろいろなタイプがいる。大穴タイプのファンばかりに応えようとすると、本命を逃がすことにもなるかもしれない。本紙記者はあの爆弾騒ぎの試合の客席でそれを実感した。そして、全てのファンに応える方法が一つだけあるとも思った。それは、できる全ての方法を取って必死に勝とうとすること。その姿勢を見れば、例えそれで負けたとしても決してファンは離れていかない。必ずまた、球場に集う、と。
BY キッコ
(終)
最初のコメントを投稿しよう!