球場(スタジアム)に集う

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○カレー屋『いんでぃ』 結子がどぎつい黄色のカレーをかっこみ空にする。 結子「マスター、30倍カレーおかわり」 マスター「はいよ」 肩をすくめて見ている松本。 松本「けど、結局花火だったなんてさ。オレが彼女に謝ったときのあの切なさは何だったの」 結子「必死になると少しはマシよ。あんたでも」 松本「(膨れて)マスター、オレも30倍カレー」 マスター「え、いいの?」 松本「ん……やっぱ、20……いや、10倍にしとく」 マスター「しかし『グレチキが必死で勝とうとする試合が見たかった』……か。すごい理由の脅迫犯だな」 結子「『勝利すればファンはひざまずく。負ければ同じファンが車の前にひざまずいてタイヤを引き裂く』」 松本「え?」 結子「レッドソックスの熱狂的なファンをちゃかしたジョーク。いたのね、日本にもそういうファンが」 マスター「ま、やって良いことと悪いことの区別はつけんとな」 結子「バカなのよ」 結子は二皿目もペロッと平らげる。 結子「あのエセ爆弾犯も、誰だかわからない相手に媚びた話題作りしか頭にない監督、ベンチ、……メディアもね」 ○東都新聞 コラム『ファウルチップ』 ファンにはいろいろなタイプがいる。大穴タイプのファンばかりに応えようとすると、本命を逃がすことにもなるかもしれない。本紙記者はあの爆弾騒ぎの試合の客席でそれを実感した。そして、全てのファンに応える方法が一つだけあるとも思った。それは、できる全ての方法を取って必死に勝とうとすること。その姿勢を見れば、例えそれで負けたとしても決してファンは離れていかない。必ずまた、球場に集う、と。 BY キッコ (終)
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