球場(スタジアム)に集う

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○千石マリーンスタジアム ベンチ裏 大勢の記者達に取り囲まれている真田(39)。クールでカッコ良い。 が、野々村結子(28)は素知らぬ顔で、背番号47の若手の山下(19)にボイスレコーダーを向けている。 松本「キッコさん、真田のコメント取らなくていいんですか? 今日のグレチキの見所は最後に真田が代打したことくらいしか――」 松本(22)が上着の裾を引っ張るのを無視する結子。 結子「山下さん、最後の打席、代打出されて悔しくはないんですか」 山下「だって真田さんが出なくちゃ客も喜ばないし、しかたないですよ」 ニコニコと応じる山下を睨む結子。 結子「結局真田は三振した。あなたはそれよりいい結果を出す自信がなかったってことですね?」 山下「(ブスッとなり)しかたないでしょ、あの人は三振でも絵になるんだから」 結子「絵になるのは三振と他のプレイにギャップがある場合でしょ。今の真田のどこにそういう凄さがあるのよ」 松本「キッコさぁん……」 松本が、心配げに、だが止めることも出来ずに結子の後ろをウロウロ。 選手1「東都スポーツの激辛キッコだ」 選手2「あいつに食いつかれるとボロクソ書かれるぞ」 選手達はそそくさと結子の周りからいなくなる。山下も、それに紛れて結子からそれとなく逃げていく。 松本「ねえキッコさん、真田の話聞きにいきましょうよ」 結子「ごめんだわ。緊迫した場面に代打で出てきては客をガッカリさせる奴なんか」 結子、さっさと踵を返して歩いていく。 結子N「あたしは『激辛キッコ』と呼ばれる『東都スポーツ』のプロ野球担当記者。あたしの書く『ファウルチップ』は選手を一人ずつ吊るし上げるコラムとして好評を得ている。だが、今回のターゲットは断じて真田ではない」
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